ヒトリノセカイ

…で、

彼の視線の射程がとらえているのは、あたししかいなさそうだった。

ヤバい。

もう、近距離。

と、彼は立ち止まった。

「もしお暇なら」

彼は何かを差し出した。

間違いようなく、あたしに向かって。

すらりと伸びた腕、端正な顔のイメージにそぐわぬ、ほっそりした、きれいな指先。

その指先に、チケットらしきものがある。

そういえば、なんて言ったっけ?

『もし、お暇なら』

無意識に手を伸ばして、その細長い紙を見た。

うるさい柄に、印字されてる文字。
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