【長編】戦(イクサ)林羅山篇
家康、倒れる
 翌々日
 家康は駿河と遠江の国境近くの
藤枝田中で鷹狩を楽しんでいた時
に発病し倒れた。処置が早く投薬
で一命はとりとめ五日間留まって
駿府城に戻り病床についた。
 知らせを聞いた秀忠は二月一日
に江戸を発ち、二日には駿府城に
到着して家康の看病にあたった。
 病状が落ち着くと家康は崇伝を
病床に呼んだ。
「崇伝、群書治要はどうなってお
る」
「はっ、京都所司代の板倉勝重殿
に職人の手配を頼みましたが、校
合をする職人がいないとのことに
ございます」
「ならば、京都五山の僧を一山か
ら二人づつ呼んであたらせよ」
「ははっ」
「よいか頼んだぞ」
「はい。すぐにとりかかります」
 崇伝から話を聞いた道春は駿府
城の三ノ丸で作業の準備をする合
間に散逸していた三巻を捜し求め
た。
 しばらくして京から職人と僧侶
が到着して、二月二十三日から三
巻は見つからないまま作業が開始
された。
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