【長編】戦(イクサ)林羅山篇
不意の訪問
 家光は先の国書改ざんのことも
あり、道春を呼んだ。
「上様、急なことにございます
な」
「そうなのだ。対馬の義成が失態
を償うために取り計らったのだろ
うが、朝鮮がなぜ来る気になった
のだろうか」
「もしや、明が衰退しておるのと
関係があるかもしれません」
「明の衰退」
「はい、明は金という新たな国と
戦となり、国力が衰えておりま
す。噂では朝鮮にも金が圧力をか
けておるように聞きます」
「そのようなこと、なぜ今まで
黙っておった」
「申し訳ございません。まだ確か
なことが分かっておらぬゆえ、お
耳に入れては政務にさしさわりが
あると思ったのです」
「まったく、余計な気をまわすで
ない。ところで『国王』と改ざん
したことはどうすればよい」
「はっ、それにつきましては今
後『大君』を使うのがよろしいか
と」
「大君か」
「はい、大君ならば朝鮮は国王と
同格か変更したことで昇格したと
受け取りましょう。こちらでは主
君のことであり、帝をないがしろ
にしていることにはなりません」
「おお、それはよい。あとは朝鮮
の内情を探るしかないな」
「はっ」
 家光は道春と朝鮮通信使が来た
時の対応を練り、準備を進めた。
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