【長編】戦(イクサ)林羅山篇
公家の争い
 家光の女の好みを一番よく知っ
ていたのは春日局で、だからこそ
町で見かけた家光好みの娘を次々
と部屋子にして女中に仕立てたの
だ。そして家光が大奥に来るのに
あわせてそれとなく目に留まるよ
うに働かせた。亡くなった振もそ
うして目に留まり側室となった一
人だ。
 春日局には家光の後継者を誕生
させなければいけないという使命
と幕府からの期待が重くのしか
かっていた。しかしそれは春日局
の権力を強めているだけと危惧す
る者もいた。正室である孝子もそ
う感じていた。
 孝子はすでに家光との関係は遠
ざかっていたが、公家である鷹司
家の姫として徳川家に強い影響力
を保つことを唯一の生きる糧にし
ていた。また春日局が公家の三条
西家と縁戚関係にあったこともさ
らに対抗意識を燃え上がらせた。
そこで自分の側に仕える女中を家
光に近づけるように仕向けた。こ
れには春日局が口出しすることは
出来ず、いつしか水面下での公家
を代理する静かな権力争いが起
こっていた。
 そうとは知らない家光は好みの
女中が目に留まると次々に呼んで
夜を共にした。
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