【長編】戦(イクサ)林羅山篇
秀忠の催促
 道春は秀忠に「六韜、三略」
「漢書」などを読み、過去の有名
な戦を例にしてその要諦を説い
た。
 秀忠はいちいちうなずき、自分
のこれまでの戦で疑問を感じてい
たことを道春に問い、その過ちに
気づいて反省した。
 道春が江戸に来て十五日目、明
日は駿府に戻るという日に秀忠が
唐突に切り出した。
「ところで道春には弟がおるそう
じゃな」
「はい、三人おります」
「道春は父上の側にいることにな
るから、わしはその弟の一人、信
澄を側に置きたい。すぐに江戸に
呼べ」
「上様が信澄のことをご存知とは
恐れ入ります。帰りましたらすぐ
に仕度させます」
「道春とはしばらく会うこともな
いだろうが、父上をくれぐれもよ
ろしく頼む」
「ははっ」
 次の日、道春は来た時と同じよ
うに家康に同行して駿府に戻っ
た。それと入れ替わるように朝鮮
から正使の呂祐吉、副使の慶セ
ン、従事官の丁好寛の三使とその
他、二百六十余人が江戸に到着し
秀忠に朝鮮王の書簡を渡した。
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