【長編】戦(イクサ)林羅山篇
和睦
 大坂城内にまでとどく砲弾に豊
臣勢の士気は低下していった。そ
して誰もが自刃を覚悟していた
頃、家康の方から和睦の誘いが
あった。しかもその条件は、
「大坂城の本丸のみ残し、二の
丸、三の丸は取り壊す。そして大
野治長、織田有楽から人質を出す
こと」だけだった。これを知った
真田幸村や後藤又兵衛らは最終決
戦をすることを訴えた。浪人たち
には行き場所はどこにもなかった
からだ。しかし淀はすぐに次の戦
があることを悟った。そこで集
まった浪人たちにはこのまま雇い
入れておくと告げて納得させ、和
睦を受け入れることに決めた。
 徳川勢では勝戦に向かっていて
の和睦に敗戦気分が漂っていた。
しかし家康は上機嫌で将兵の労を
ねぎらってまわった。
 道春は撤退準備がすすむ茶臼山
から大坂城を見ていた。所々から
まだ煙が出ている無残な城の姿に
秀吉の老いた姿が重なって見え
た。それと同時に淀が秀吉の遺志
を成し遂げようとしている壮絶な
姿も見てとった。
 気がつけば家康が山を下ってい
る。
(大御所様は関ヶ原での失敗から
多くを学ばれた。始めは攻めてお
いて後に退く。淀殿は誘いに乗っ
たが、難しいのはここからだ)
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