大剣のエーテル

*月灯りの治療



「じゃあ、そこの椅子にかけて。」


ルタさんに案内された先は、木でできた家具が並ぶ、温かみのある部屋だった。

私と向かい合わせになるようにして座ったルタさんは、手際良く救急箱と薬草を用意する。

まくられた白衣の袖から覗く腕が思ったよりも筋肉質で、やはり彼はエーテルの団員なのだと実感した。


(白衣の天使って呼ばれるくらい中性的で綺麗な外見だけど、やっぱり男の人なんだな…。)


「何見てんの。早く患部を見せて。」


「は、はい!ごめんなさい…!」


(まずい。つい、見惚れてた…!)


眉をひそめたルタさんに、私はどきり、としてシャツの襟のリボンに手をかける。

ルタさんが、少し面食らったようにぴくり、と肩を震わせた。

私は、特に気に留めずボタンを外していく。


「ストップ。」


「はい?」


ルタさんは、ふいっ、と視線を逸らして目を細めた。

きょとん、とまばたきをすると、ルタさんは気まずそうに口を開く。


「あんた、一応女の子でしょ。せめて向こう向いて脱げば?背中だけこっちに向ければいいから。」


ぼっ!と顔が熱くなる。


(そ、そうだよね。何も考えてなかった)


くるりとルタさんに背を向けると、彼は小さく呼吸をして呟く。


「別に、俺はあんたの胸板みたところで何とも思わないけど。」


「っ!胸板、じゃないです…!」


「はいはい。じゃあなおさらでしょ。…はぁ。何で俺の方が気を使わなきゃいけないの。」

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