大剣のエーテル

*翡翠の温もり


カチ…コチ…カチ…


時を刻む針の音だけが聞こえている。

時計はすでに午後11時を回っていて、街中が寝静まり始めたようだ。

窓の外を見ると、街にはぽつぽつと街灯がつき、中心部にそびえる本部は煌々と明かりがついている。

心の中は、ランバートのことでいっぱいだった。


「〜……〜…!……」


「!」


その時、扉の向こうから話し声が聞こえた気がした。

私は反射的に、腰掛けていた椅子からばっ!と立ち上がる。


パタパタパタ…!


素早く部屋の扉に駆け寄って、ガチャ!とドアノブを回し、勢いよく扉を開けて廊下に出た瞬間。

ドンッ!とその先にいた人物にぶつかった。


「っと!ノアちゃん…?!」


「!!」


聞き慣れた声にどくん!と胸が鳴る。

見上げた先には、驚きで見開かれた綺麗な翡翠の瞳。


「…ラン、バート……!」


掠れる声で彼の名を呼んだ。

ランバートは、ふにゃり、と優しい笑みを浮かべて答える。


「…ただいま、ノアちゃん。」


(…!)


彼は、私を労わるように肩を撫でる。


「あー、びっくりした。そんなに慌てて、一体どうしたの……」


ぎゅっ!


私は無意識にランバートに抱きついた。

彼は、ぴたり、と言葉を止める。

じんわりと、外套越しに温かな体温が伝わってきた。


(…いき…てる……。)


< 173 / 369 >

この作品をシェア

pagetop