大剣のエーテル
その時、ふわり、といい匂いがした。
つられるようにして視線を向けると、焚き火にかけられた鍋の中に具材たっぷりのスープが見える。
(美味しそう…!)
ぱぁっと目を輝かせると、イヴァンさんは私に向かって声をかけた。
「朝飯は作っておいた。俺はもう済ませたから、好きなだけ食べていいぞ。」
「えっ!」
つい声をあげて彼を見上げると、イヴァンさんは眉を寄せた。
「どうした?」
「いえ…。」
(イヴァンさんが料理をするなんてちょっと意外で…)
なんて、言ったら睨まれそうだ。
ましてや、殺し屋のような外見にエプロンをしているイヴァンさんが、なんだか可愛く見えた、なんて言えるはずがない。
「これからは私も手伝います…!料理も洗濯も、私に出来ることなら何でも言ってください!」
すると、イヴァンさんは「それはありがたいな。」と言うと、心なしか柔らかな声で言葉を続けた。
「これから当分一緒にやっていくわけだし、俺にそんなに気を使わなくてもいい。年の離れた兄貴とでも思ってくれ。敬語は面倒だろ。」
「あ…、う、うん。」
(兄貴と言うよりお母さんみたい…、なんて言ったら、さすがに怒られるだろうな。)