大剣のエーテル


「どいて。」


私の後ろから、芯の通った声がした。

ぱっ!と後ろを振り返ると、そこにいたのは“白衣を着た青年”の姿。

綺麗な銀髪に、透き通った碧眼。

雪のような白い肌は、薄幸の美少年というような雰囲気を醸し出している。

言葉の威圧感におされ、道を開けた私の横を通り過ぎた彼は、一直線に倒れている男性の元へ向かいしゃがみ込んだ。

真剣な顔つきで男性の容態を確認している。

そして、数秒後。青年は怪我を負った男性に向かって声をかけた。


「大丈夫、あんたは死なないよ。裂傷は浅いし、脈もしっかりしてる。だけど出血が多いから、今から俺の診療所に来てもらう。…いいね?」


男性がこくりと頷くと、青年は素早く男性の肩に腕を回した。

その様子に目を奪われていると、青年は、ふっ、と顔を上げて口を開く。


「ランバート。この人運ぶの手伝って。」


ランバートは、彼の指示に従って男性の肩を持つ。

青年は、そのまま男性を支えながらゆっくり立ち上がると、周りを取り囲んでいる町の人々へと視線を向けた。

人々の注目が青年に集まった瞬間。

彼は表情を一つも変えずに言い放つ。


「ここに集まってきたあんたら、命知らずにもほどがあるよ。人斬りは見世物じゃない。身近な知り合いが怪我して心配だろうけど、好奇心で現場をウロつかれたら、迷惑。」

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