短編集

「あの...」
「ん?」
「千晴くんはあたしのこと好きなんですか?」
「うん。好き」

間髪入れない即答に驚いた。
ただここで確かめなきゃいけないのは―――、

「それって恋愛感情で、ですか?」

 ―――これだと思う。

千晴くんは「うーん」と言いながら信号が青に変わったと同時にアクセルを踏む。

曖昧な返事に一抹の不安。
ざっくばらんな人とは思ってたけど、こういうところまでそうだと思わなかった。

「俺、彼女大好きやねん」
「はい?」
「ちゃうねん、なんて言うたらいいんやろ。俺の“彼女”になってくれる子みんな好きやねん」
「はあ…」
「俺の彼女になってくれたら、その時点からむっちゃ好きやねん。俺、浮気したことないし振られたことしかないし」

素直に頷いていいのかわかんなくなる言葉。
納得していいのか、丸め込まれてるのか、さっぱりわかんないけど、口調では冗談じゃないことだけはわかる。

「だから“誰でもいいんか”って言われたら、それはそうじゃないねん。今は友達として“好き”やけど付き合い始めたら“彼女として”好きになるから嫉妬もするし不安にもなるねん」
「まぁ、それはそうですよね」
「せやろ?まぁぶっちゃけた話、俺は好きやねん」
「え?」
「だから、宮枇のこと好きやねん」

まさかの告白に目を見開いて止まってしまったあたしに「お前寝てるんちゃうやろな?俺の話聞いてるか?」と頭をぐしゃぐしゃに撫でられた。

そうなるも当然、“ぶっちゃけた話”なんて突然告白されても流れ読めないし頭の中を整理する前に次々話が進むからついていくことに必死なのに告白なんて。

「それって恋愛感情で、ですか?」
「そう」
「え?さっきは、」
「さっきはさっき、今は今」

えぇー!?ってなる感情を抑えながら、車を停めた千晴くんを見た。

千晴くんちの駐車場。
駅が徒歩1分の場所にあるからいつもここでバイバイする。
でも今はドアを開けていつもどおりには帰れない。

「俺、優しいで?今も優しいけど」

 ……自信満々。

「俺一途やしな。振られたことしかないし」

 ……聞いたの2回目。

「誰でも好きになるわけちゃうで?宮枇は一緒におって楽しいし癒されるし、もっと一緒に遊びに行きたいし一緒におりたい。そう思ったから告ってんの」

 ……真面目な告白に不覚にもドキッとさせられた。

聞き慣れない関西弁。
ストレートな言葉。
遠回しじゃない飾らない告白にドキドキする。

「あたし、料理出来ないですよ」
「一緒やな、俺もでけへん。一緒に練習しようや」
「センスないから贈り物とか苦手だし」
「贈り物とかいらんねん。一緒におれたらそれでええねん」

あたしのネガティブ発言を全部プラスに変えてしまう。
なんでもポジティブに捉えて背中を押してくれるのが千晴くんらしい。
それに全ての答えがストレートすぎてドキドキする。

直前まで全然意識していなかったけど真っ直ぐ見つめられると急に意識して緊張する。
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