この愛、スイーツ以上
ちょっと、待って!と止めたかったのに、間に合わなかった。


「ここのカスタードクリーム、美味しいね」

「そ、そうですね。モチモチした生地と合っていますよね……」


ハンカチを握りしめた私は、恥ずかしさに顔を俯かせて返事をした。

何を考えて、私の口に付いていたクリームを舐めるのだか……何も考えていないでの行動なのかな。


「副社長。吉川さんが困っていますよ」

「なんで? ああ、生地は米粉を使っているからモチモチしているんだよ」

「そうなんですね」


って、違う!

そういう話ではない。

材料を知れなくて困っているのではない。安田さんは分かってくれているのに、副社長は分かってくれないからもどかしくなった。


「いや、副社長、そうではなくて、指で取ったクリームを口に入れたことに吉川さんは困っているんですよ」

「なんで? 吉川さんのだから汚なくないよ。これが安田さんのなら入れないけどね」

「それは、私も入れられないよう全力で手を押さえつけますよ」


真顔で二人はおかしな会話をしている。

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