この愛、スイーツ以上
今まで食べたことのあるシュークリームのどれよりも美味しくて、私は目をパチクリさせてコクコクと頷いた。口の中はクリームでいっぱいなので今は声に出して美味しさを表現出来ない。

これから食べようとしていた安田さんが笑う。


「美味しいんですね。副社長、喜んでくれていますよ。よかったですね」

「うん」


同じように笑う副社長ももう食べていた。

ボリュームがあるから一つ食べただけでお腹が膨れた。


「とっても美味しかったです!」

「それはよかった」


副社長と安田さんは笑いながらまだ私を見ている。美味しく食べる私はそんなにおもしろい顔をしていただろうか。

コーヒーを飲もうとカップを持つと、副社長の手が伸びてきて口の端に触れる。

思いがけないことに私は体を揺らした。


「クリーム、残ってる」

「え、あ、ああ! すみません!」


二人が笑っていたのはクリームを付けた私の顔だったようだ。

副社長の指先に付いたクリームを拭うためにスカートのポケットからハンカチを出したが、それよりも先にそれを口に入れていた。
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