この愛、スイーツ以上
「今度また紫乃ちゃんに会わせてくださいね」


もし副社長から誘われたとしてもオフィス以外では会うことをしないようにと思っていたのに……つい見てくれないから悔しくなった。

案の定副社長は紫乃ちゃんにピクッと体を反応させて、顔をこちらに向けた。


「あ、由梨! 今日からだったね。おはよう!」


さっきまでこの人は誰と言葉を交わしていたのかと憤慨したくなるが、そこは抑えて挨拶し直した。

一応こちらを見てくれたからとりあえず良しとしよう。


「今日からお世話になります。よろしくお願いいたします」

「吉川さん、頼もしいですね。ところで副社長、社内で吉川さんを下の名前で呼ぶのはいかがなるものかと思いますので、自粛してもらえますか」

「気をつけるよ……。それよりもちょっとこれを見て」


安田さんの要求は渋々といった感じだったが、受け入れていた。

でも、そのあと私を呼ぶのはなんだろう?

早速なにか指示されるのかと副社長の手元にある資料を見ようと近付いたが、そこにあるのは資料ではなくてスマホだった。
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