この愛、スイーツ以上
困惑の密室
副社長室に着任してから二週間が経ったある日の朝。

エレベーターで最上階まで来るのにも慣れて、足取りも少し軽くなっていた。


「おはようございます!」

「吉川さん、おはようございます」


早々とパソコンに向かっている安田さんが穏やかに返してくれる。

いつもは私よりも早くに来ている副社長の姿はなかった。

安田さんに尋ねると30分ほど遅れてくるとのこと。珍しいけど、特に気に止めないで私もパソコンに向き合った。

まずは副社長と安田さんの今日のスケジュールチェック。昨日、帰るときに見たのと変わりはない。

10時から会議予定になっているが、それまでに出社してくるというから遅刻してもスケジュールに変更はないようだ。


「吉川さんにお願いすることがあります」

「はい、なんでしょう?」

「副社長には昨日了解を得たのですが、来週月曜日から二週間、私は休暇を取ります」

「えっ? 安田さん、二週間もお休みされるんですか?」


安田さんの父親が先月から入院していて、来週が手術予定となっている。休日に一度だけ見舞いには行ったが、手術前とその後は看病も兼ねてそばにいたいそうだ。
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