この愛、スイーツ以上
安田さんの登場により解放された私は震える手でカップを片付ける。

落とさないよう注意しながら。

10分後に打ち合わせがあると二人が出ていき、応接室の片付けを終えた私は一人で留守番。

一人でいるには寂しいけど、安田さんから指示されたファイリングを始める。

ふと手を止めて、窓から外を眺める。晴れてはいるけれど、遠くの方に見える雲は灰色だ。明日は雨予報だったなと朝テレビで見た週間天気予報を思い出す。

それにしても……外から室内に視線を移し、副社長のデスクを見る。シャットダウンはされているけれど、パソコンは蓋は開けたまま。

彼が何を考えているのかはなかなか理解するのが難しいな。

私の一番の任務がパーティーの出席だとは本当に頭が痛くなる。

帰りに書店でマナーの本を買って、姉のところに行こうかな。

姉と透さんに話を聞いてもらいたい。副社長を知る透さんなら彼の理解しがたい行動の理由が分かるかもしれない。

でも抱き締められたことを話すのは、やっぱり恥ずかしいからやめておこうかな。
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