俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
2 優しくされると困ります
初めて訪れた大河の自宅は、予想のはるかに上をいく高級マンションで、私は度肝を抜かれてしまった。

「うわぁぁぁ……」

乗せられたエレベータはガラス張りで、地上から離れてどんどん上昇していく。
見事な夜景だ。いったい何階まで上れば辿り着けるのだろう。

「大河って、やっぱりお金持ちだったんだね」

「……別に。会社が用意した社宅みたいなもんで――」

「わかってるよ。もう大企業の社長様だもんね。これくらいが当たり前なんでしょう?」

なんだか卑屈な言い方になってしまったのを反省して、口をつぐんだ。
自分の価値観で計ろうとしちゃダメだ、きっと大河にはこのくらいが当たり前なのだから。

やっと辿り着いた大河の家は、見たこともないくらい大きなリビングにたくさんの部屋、まるでドラマの中に出てくるセレブの豪邸そのものだった。
もちろんこれはドラマなどではなく現実で、大河は本物のセレブなのだけれど。

思わず漏れたのは、感嘆の声――ではなく、ため息だった。

「……なんかさ、中学までは、同じ場所で同じものを見て生きてきたはずなのに、いつからこんなに差が出ちゃったんだろう。きっと私が一生かけて働いたところで、この家は買えないんだろうな」

痛感してしまった。私と大河は、住む世界が違いすぎる。
こうやって対等に話していること自体、おかしいのかもしれない。

彼がひとり暮らしを始めたとき、私は何度も「どんなところに住んでいるの?」「部屋を見せて」と頼んだ。
けれど、彼は頑なにそれを拒否して、一度も部屋に案内してはくれなかった。
今では見なくて正解だったと、なんとなく思う。
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