俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「大河……今あなた、私のお母さんになんて言ったの……?」

「全部隣で聞いてただろ?」

「不穏な会話の断片しか聞こえなかったよ」

「若くて恰好よくて高収入な俺と、あの公務員のオッサンと、どっちを息子にしたいですかって聞いたんだよ」

「それって――」

つまり、私と大河が結婚しますってお母さんに宣言しちゃったってこと!?

狼狽える私を見透かすように、大河は顔をしかめる。

「時間稼ぎだよ。今のうちに再就職なりなんなり決めて、打開策を考えろ。お見合いの話がなくなった頃に、俺と別れましたっつって何食わぬ顔で家に帰ればいいんだよ」

なるほど、と私は腑に落ちて、ホッとしたような拍子抜けしたような、ちょっぴり虚しい気分になって息を吐く。

一瞬、本当に結婚するつもりなのかとドキリとしたが、さすがにそんな気はないらしい。
なにしろ大河には、彼女だっているわけだし。

あきらかに安堵する私を見て、大河は私の額をピンと弾く。

「なに安心しきってんだ。ちゃんと就職先決めなきゃ、俺の花嫁にするからな」

「へ!?」

「それが嫌なら、しっかり頑張れよ」

茶目っ気たっぷりに笑ったあと、大河は私の手を引いて公園の出口へと向かう。
足早に彼のあとを追いかけながら、私は彼の脅し文句にうつむいて胸をひりひりさせていた。

――俺の花嫁にするからな――って、全然お仕置きになってないよ。

止めてあった車に乗り込んで、私たちは大河の家へと向かう。
そういえば、助手席に乗せてもらうのも、大河の家へ行くのも初めてだ。

無駄にドキドキと緊張しながら、私は運転席の大河を横目で覗き込み、様子をうかがうのだった。
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