俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
大河の実家は、私の住むこの家から徒歩一分のところにある、五百坪と称される大豪邸だ。
その超セレブ一家の長男として生を受けた彼は、お坊ちゃまのくせに以外と自由奔放に育てられ、小、中学校ともにお受験ではなく、私と同じ公立のごく普通の学校に入学させられた。

小学生には身分の差など関係ない。家が近いこともあり、ごく自然に仲よくなった。
さすがに高校以降は学校が離れて少々疎遠にもなったが、それでも定期的に顔を合わせては、近況報告なんかをしている。

「つか、だったらどうして会社辞めたりしたんだよ。大手に就職できてラッキーって言ってただろ」

「……話したじゃない、部長のセクハラが酷くて耐えられないって。っていうか、さっさとそんな会社辞めろって焚きつけたの、大河だよ? まさか覚えてないの?」

「そうだっけ?」

あっけらかんと言い放つ大河。この男、人の人生を左右する助言をしておいて、覚えてないってどういうことよ。

――とにかく、大学を卒業して就職した食品関連の大手企業は、待遇こそよかったものの、部長のお尻お触りが酷すぎて五年で退社の運びとなった。
現在、二十七歳にして無職――二度目の就職活動に勤しんでいるわけである。

「で、今度はコレと結婚させられるわけだ? お前、ほんっと男運皆無な!」

「もう、これ以上からかうならさっさと帰って!」

「待てって、からかうためにわざわざ来たわけじゃねぇって」

大河がショルダーバッグの中身をがさごそ言わせて取り出したのは、綺麗にラッピングされた箱だった。

「これ、渡すためにきたんだからな。喜べ。フランス出張の土産」

「うわー! ありがとう!」
< 2 / 173 >

この作品をシェア

pagetop