俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「……たまには、お母さんを楽させてあげようと思って。どうしてそんなこと聞くの?」

「別に」

嘘の答えを聞いて、大河はあきらかに不機嫌な態度でご飯を口に放り込む。

「……どうしたの?」

「いや、別に、たいしたことじゃないんだけど……」

丼ぶりで口もとを隠しながら、大河は気まずそうにそっぽを向いた。

「これを最初に食った男に、ちょっと腹が立ってただけだ」

思わずけほっ、とむせてしまい、慌ててお味噌汁を啜って心を落ち着かせた。
どうして読まれてしまったのだろうか。私って、嘘が顔にでるタイプだったかな。

「次に料理を作るときは、莉依が初めて作るメニューにしてくれ。……作ってる間中、昔の男の思い出に浸られたら、たまったもんじゃない」

大河は目を逸らしたままぶっきらぼうに言う。

そっちこそ、ついさっきまで元カノと一緒にいたくせに。自分のことは棚に上げて勝手を言うもんだ。

なにがあったのか、どこにいたのか、どうして三時間もかかったのか、ちょっとくらい説明してくれたっていいのに。
私がどんな気持ちで大河の帰りを待っていたか――。

たとえ一瞬の気まぐれでも、私を口説こうとしたんだから、抱きたいって言ったんだから、なにごともなかったみたいに放っておかないでほしい。
それとも、説明できないことがあったのだろうか。
寄りを戻した、とか……。

想像してずんと心が重たくなる。

お願いだから、なんとか言ってよ。

不安感を払拭したくて、でも真実を聞くのは怖くて、言いようのないもやもやが胸の中を占拠し続けていた。
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