俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
席についた大河が、両手を合わせていただきますのポーズをとる。
その正面に座りながら、私も同じように手を合わせた。

「俺、お前の手料理初めてだ」

まじまじと親子丼を見つめながら感慨深そうに言うものだから、なんだか恥ずかしくなってしまう。

感動されるようなメニューじゃないのに。せっかく作るなら、もっと気合いの入った一品にするべきだっただろうか。
どうしよう、もし口に合わなかったら……。
塩と砂糖を間違えるなんてベタな失敗してないよね……?

けれど、大河は親子丼を口に運び、パッと瞳を明るくした。

「うまい」

「よかった」

心の底からほっと安堵のため息をつく。こんなに緊張した一口目は初めてだ。

「……実家にいたら、料理なんて作らないんじゃないのか?」

「まぁ、だいたいお母さんがやってくれちゃうしね。自分からやろうと思わない限りは、キッチンに立たないし……」

「……どうしてやろうと思ったんだ?」

「え……?」

私が親子丼から顔を上げると、大河がこちらをじっと睨んでいて、ぎょっとした。

「……料理、誰のために作ろうとしてたんだ? 彼氏か?」

真剣な瞳が真っ直ぐに私の答えを待っていて、ドキリとする。
当時付き合っていたひとり暮らしの彼氏に振る舞ってあげたくて練習した――とはとても言い出せない雰囲気だ。
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