chocolate mint
「だからさ、そうやって同窓会のあの場で別れたくないって割り込んで来るとか、相手に嫉妬するとか、素直に感情を見せてくれたらわざわざ俺がこんな店まで来なくても良かっただろ」
「「……はぁ?!」」
あなたが他の女にプロポーズをした瞬間に、私たちは別れているはずだと、そう言う香織ちゃんに耳を貸す様子も無く、ヤツが『Milkyway』の事を『こんな店』呼ばわりした瞬間、壁の向こうの香織ちゃんと全く同じセリフと同じタイミングで、隣にいる男が声を荒げた。
「……なんだ、アイツ。人の店を『こんな店』なんて言いやがって。とりあえず、一回殴っておくか」
腰を浮かしかけた奏一くんの腕を掴んで、慌てて引き留める。
「いやいやいや、奏一くん殴るのは止めようよ。手が勿体ないし。しかも、今出ちゃったら、何の為に奏一くんにここに隠れてもらったのか分かんなくなっちゃうって!」
「……ま、それもそうだな」
ため息をつきながら座り直した奏一くんを見て、息を吐く。
……話がややこしくなるのを、何とか阻止できた。
ここで奏一くんが話を聞いていたのが香織ちゃんにばれてしまったら、最悪僕は香織ちゃんに絶交されてしまいかねない。
ーー「香織はさ、気は強いけど、不満は言わないし、俺がちょっと我が儘言ってもさ、はいはいって笑って聞いてくれて、うまく俺を立ててくれてた。付き合う前から明るくて、てきぱきしてて、みんなの事うまく仕切ってくれて、そういう気が利いて頼りになる所が好きだった」
「プロポーズの用意もしてさ、後は香織のオッケーをもらうだけ、って時になってさ、香織ってほんとに俺の事好きなのかな?……って疑問に思ったんだ」
壁一枚隔てた向こう側では、バカ(菊井)が独り善がりの言葉を喋り続けている。
……コイツは二年も付き合っていて、香織ちゃんの何を見ていたんだろう。