キスしたのは最低野郎でした。
私と貴方の始まり

空に瞬く星を見ながら

私は高校からの帰り道、一人で公園に来ていた。
馴染み深い公園で親友の美海(ミナミ)とよく来ていた思い出深い場所だ。
もう夜といっていい程の時間で空は墨で塗りつぶしたみたいに真っ黒だった。
ちょっとお腹が空いている身体に力を入れて少し奥にある2つ並んだブランコの一方に腰を下ろす。陽も差していなければ気温も低かった為、ブランコは冷たくなっておりそれが私の身体に伝わって少し身震いをする。
「冬… か」
もうそんな時期に差し掛かっているのかと、今まさに実感したばかりなのにふと思う。
部活、高校って本当に長いよね、携帯触ってる時間もないや・・。
少し、寂しく感じた。何故だろう。何も無い筈なのに。
「まぁ、いっか」
そのことについては考えるのをやめ、私はブランコを漕ぎ始めた。私の頬に冷たく冷えた空気が当たる。
「…寒い」
今凄く当たり前なことを思った気がするが気にしないでおこう。ポイっと鞄を地面に投げて今度は走り回った。
まるで何かを忘れ去る為に、紛らわす為に。
またもや冷たい空気が私を襲った。
「…寒い」
さほど走っていない為身体はまだ冷えたままだった。
その為寒いと感じてしまったのだろう。
あれ、あったかくなると思ったのにな。
予想以上に走らないと温かくならないらしいのでこれ以上お腹を空かせない為にも走るのを中断した。
「帰ろ」
帰りたい。そう思ったからだ。他に理由なんてない。
…実を言うとお腹が限界を向かえていたからである。
私は空を見上げる。頭上には満天の星空が広がっていて、そんな美しい光景に一人溜め息をついた。
「きれー…」
見とれてしまっていた。その光景に。
私は地面に寝転んだ。体から力を抜いて、ゆったりと流れていく色々な星に目をやる。
こんなに綺麗で美しいのに、朝になると消えちゃうんだよね。もったいないなぁ・・・。
星は夜という静かな時間に現れ、皆に気付かれぬように朝どこかへ消えていってしまう。まるで寝息をたてる人間達を見守っていたかのように。
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