嫌いは好きの言い様
ガチャ

「ごめんね、こんな時間に」

「どうしたの?」

「凛、前参考書貸してほしいって言ってたでしょ?
だから持ってきた」

「ありがとうー!じゃあ…」

参考書を受取り、部屋の中に入ろうとしたその時


「…ちょっと散歩しない?」

翔馬がそう言った。

(散歩?)
「う、うん」

そしてあたしと翔馬は散歩をし、近くの公園に寄った。

夜の公園で二人きりだからドキドキした。

あたし達はブランコに乗った。

ギコギコ

「参考書ありがとう」

「ううん。懍の役に立てるなら」

(翔馬?いつもと様子違う?)

「あ…優華の話…。」

「うん、聞いたよ。優華から」

「…そっか。」

「僕が言った事、全部本音だよ。優華の好きにすれば良いって。僕は優華の事何とも思ってないからね」

「…そんな言い方…!あたし達幼なじみなんだよ?」

「…幼なじみでも、踏み込める所と踏み込めない所はあるだろ?
僕達は全部一緒に出来るわけじゃない。」

そう言った翔馬の目は冷たい目をしてる。

「…翔馬は幼なじみが悩んでても相談に乗ってくれないの?」

「…え?」

「…あたしが悩んでても相談に乗ってくれないの?」

「…どういう事?」

「…あたしも告白されたんだよ!…中学のOBの人に。それでも翔馬は相談に乗ってくれないの!?」

「………」

ガシャン

その時翔馬はあたしの前に来た。

「…じゃあさ。」

「ちょっと翔馬…」

「…俺がやめろって言ったら懍はそのOBの人と付き合うのやめてくれんの?」

「え?」

(…翔馬?)

その時の翔馬は悲しい目をしていた。

「懍は全部、俺の言う通りにしてくれんのかよ!」

初めて見た翔馬のこんな顔…。

「…優華ももちろん大事だよ。
でもそれは大切な幼なじみとして大事なだけで
それ以上の感情なんて俺は持ってない。
…俺が本当に大事なのは」

その時、翔馬があたしにキスをした。

「…懍だけだよ。」

あたしはびっくりして翔馬を突き飛ばした。

「懍!」

…何で。…何で。

ずっと…四人でうまくいってると思ってたのに…
 
四人だけのあの空間が

大好きだったのに…。

何で…。

でもその日されたあのキスはずっと残ったままだった。
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