おばさんガール
これしかない。


三津代は作戦を立てた。


病院の外では、小さな機械でお喋りをしている人がちらほら見えて、はじめは何だろうと思った。

ある日、となりの病室にいる高校生の女の子に、その機械について尋ねた。


「え、おばさんケータイ知らないんですか?!
うっそ、マジビックリ!!あり得ないよ~それ。」


ケータイ?

「ケータイって、もしかして携帯電話のこと??!」

「そうだよ~。本当に記憶が無くなっちゃったんだね。今はみんな、もってるの当たり前だよ。」


三津代はカルチャーショックを受けていた。

というのも、かつて一度だけ携帯電話を見た事があったのだ。


お父さんの弟は、いかがわしい仕事をしていた。

お父さんも親戚も誰も教えてくれなかったが、ある日いとこの美香子ねえちゃんがこっそり教えてくれた。
「清一おじさん、ヤクザなんだって。」


その清一おじさんが、携帯電話を持っていた。 しかしそれは移動式の固定電話のようなもので バッグみたいな肩掛け用のストラップがついていた。

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