おばさんガール
三津代は、夢を見た。

学校の校門の前にいた。


「あ、岸さん。」


同じクラスの小林賢一が声をかけてきた。


「小林君。部活帰り?」

「うん。岸さんも?」

「そう。
けどバス逃しちゃって。いいねチャリ通。」

小林君は少しだけ考えて、

「駅まで、乗ってく?うしろ。」

って言った。

え。


どうしよ。

嬉しすぎる。汗かいちゃうかも。

「わたし重いよー。大丈夫かな」

「重くないよ。乗りなよ、うしろ。」


「…あ、ありがと。じゃあよろしく。」


きゃー 照れる~


…小林君が近い。


汗とシャンプーの混じったような 男の子の匂い。


あぁ この匂いに 包まれたいなぁ。

私小林君が、好きなんだ。


だからそう思うのも 普通だよね?


「岸さんのさ、シャンプーなんのやつ?」


え?


「あ、え 何で?」

びっくりした。

同じようなこと 考えてたから…

「何だっけ…確か資生堂のやつだったと思うよ。名前忘れちゃった。」

何か、男の子に人気の ジューシーフルーツの香りとかゆうのだった。


「そうなんだ。

何か、おいしそう。匂い。」


…あぁ 壊れそう。そんなセリフ言われたら。

「ねぇ小林君。」

「ん?」


「うしろ少し不安定みたい。少しだけ肩借りてもいーですか?」


小林君は少しだけ笑った。
「何で敬語なのさ。
しっかり捕まってて、岸さん。」


三津代は華奢な肩にそっと、指を乗せた。

汗とシャンプーと小林君の匂いが少し近づいた。

あぁ、嬉しい。


この時間が、終わらなきゃいいのに。

まるで夢みたい…


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