紳士的上司は愛を紡ぐ

八王子アナも、何か飲むだろうか。
ソファーに座る彼の前には、特に飲み物も無くただ眠るために居るように見える。

再び自販機の立てる物音にヒヤヒヤしながら、同じミルクティーをソファーの前にあるローテーブルにそっと置いた。


そんな一件も忘れつつあった翌週。


「この間は、ありがとうございます。」

と言って、デスクに向かう私の前にミルクティーが差し出された。驚いて振り返ると、そこにいたのは八王子アナで。

「えっ……あ、いえ。こちらこそ。」

入社以来2年、共演番組も無かった為、まともな会話自体初めてで、緊張のあまり上手く返事が出来ない。

「二宮アナは、深夜ニュースが多いから、ちゃんと喋ったこと無かったですね。」

彼が私の気持ちと同じようにそう話した。

「はい。でも…どうして分かったんですか?差し入れたのが私だって。」


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