紳士的上司は愛を紡ぐ

恋愛だってそう。
もちろんしたくない訳ではない。
むしろ憧れはある。

ただそれも、いつか安定した人と、平和な結婚生活が送れれば十分だ。
イケメンでなくても、特別高給取りじゃなくたっていい。

私が、"この人となら安心する"と思えることが条件だ。

だから……

八王子 透アナウンサー。

彼みたいな人気者との接触は避けたかった。
勿論、私情を持ち込むつもりも、好きになるつもりも全くない。

そうは言っても、私の"安定ライフ"が多少脅かされるのは目に見えている。

これから、どうなってしまうのだろうか……。

そう思いながら、深夜ニュースの本番へ向かう直前、いつものように化粧室で身だしなみを整える。

曇りのない鏡には、新しく舞い込んだ依頼に、どうしようもなく不安を抱える自分が映っていた。
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