紳士的上司は愛を紡ぐ

以降、番組の内容をあまり覚えていない。

気付けば、テレビの電源は切れていて、真っ暗な画面には酷く落ち込んだ表情の私がいた。

「麻里、聞いた?さっきの。」

考え込んだ様子の涼子と画面越しに目が合う。

「うん、"10年前"って…………。」

颯さんの言う通り、"一途"なことはよく分かる。ただ、10年前には、

「私、八王子アナのこと知らない。」

当たり前だ。
普通に計算して、当時彼は21歳、私は19歳。出身大学も地元も違う私達は、まだ知り合ってすらいない。

……ただの他人だ。

< 88 / 143 >

この作品をシェア

pagetop