私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
ようやく自分を受け入れてくれる仕事先を見つけて、しかもバリスタとして修行ができると浮かれていた気持ちが一気に萎えていくのがわかる。

「雨、降りそうだからあまり長居しないほうがいい」

そう言われて窓の外を見てみた。ここに来た時はすでに日も暮れていたが、星ひとつ見えない空に雨の予感がした。

「帰ったら?」

「そ、そうですね、傘持ってきてないんで……。失礼します」

一時間ほどここにいただろうか、気が付くと半分くらい席が埋まっていた。これから忙しくなるから早く帰れ、と言われているようでモヤっとしたものがあったけれど、邪魔をするわけにもいかず、私は最後にもう一度頭を下げると店を出た。

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