私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「なに?」

じっと見つめる私の視線が煩わしかったのか、石堂さんは横目で睨むように見て言った。

「い、いえ……」

「この店、アルコールは出せないからな、これは俺の私物」

石堂さんはこうして仕事終わりにひとりで一杯飲みながら、休息のひとときを堪能しているのだろう。ウィスキーボトルはほとんど空だった。

「お前に今日教えることはもうない。さっさと帰れよ、疲れた」

ひとりにしてくれ。そういわれた気がして、私はそそくさと自分の使ったカップをシンクで洗う。

仕事終わって私にこうして教えるのも、余計に疲れちゃうよね――。

あ~早く一人前になりたい――。

そんな思いがふつふつと沸き起こる。

「今日はありがとうございました。また明日よろしくお願いします」

身支度をして私は、帰り間際に石堂さんの前でぺこりと頭を下げる。顔を上げると、石堂さんはどことなく思い詰めたような表情をして私を見た。
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