私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
石堂さんが優雅にコーヒーを淹れる姿は絵になる。女性客たちは、「いま目が合った」「笑ってくれた」とキラキラと目を輝かせて話に花を咲かせていた。

今日もそつなく仕事をこなし、石堂さんのレッスンを終えて自宅へ帰る。鍵をあけて玄関を締めるとどっと疲れが押し寄せてきた。ハァとひといきついたその時、沙耶からの着信が入った。

『もしもーし、里美? 来週の月曜、用事が済んでから行くね。八時くらいだけど大丈夫?』

「え? 来週の月曜……?」

『もう、里美、店に行くって話、忘れたんじゃないでしょうね?』

そうだ。あまりにも日々忙しく、来週の月曜日に沙耶がスフラに来てくれることを思い出した。忘れていたわけじゃない。ただ、頭の片隅に一時的に置いていただけ。

「忘れてないよ、うん、大丈夫」

そのくらいの時間なら混雑のピークは過ぎて少し落ち着く頃だ。気持ちに余裕を持っていける。そう返事をすると、沙耶は急いでいたのか、用件だけ確認するとすぐに電話を切った。

コーヒー飲も――。

いつものようにコーヒーを淹れ、部屋に香ばしい香りが広がる。
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