私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
私もバリスタらしく何度か石堂さんの指導を受けながらコーヒーを淹れた。けれど、ラテやオレ、マキアートなど、コーヒーとミルクの分量の違いのある難しいものはまだ修業中だ。

石堂さんから商品としてOKをもらっていない。ひたすらブレンドを淹れながら店で使っている豆の名称から特徴まですべて記憶し、微量な抽出加減やタイミングなど技術を磨いた。けれど、石堂さんは容赦なく「不器用」「考えなし」「センスなし」と散々私に厳しい言葉を浴びせてくる。

自分の不甲斐なさに涙が浮かぶこともあったが、石堂さんはちゃんとさりげないフォローをいれて、私の仕事を見届けてくれているのがわかる。だからこそ、私は食いつくように頑張るしかなかった。

いつものようにエントランスのドアにブラインドとclosedの札を下げ、休憩室に入ると石堂さんがひとりいた。そして私の大荷物を見るなり怪訝そうな表情を向けた。

「なんだこれは」

石堂さんは、私が購入したカフェの雑誌をひょいっと一冊取り上げると、あまり興味なさそうにぱらぱらとめくった。

「これ、クリスマスメニューになにか役に立つと思って……あ、それから、このブラックボードも見てください」

大きな袋からボードを取り出してわくわくしながら見せたけれど、それでも石堂さんはあまりぱっとしない様子だった。

「店頭にオススメとか限定メニューを目立つようにこれに描いて、少しでもお客さんの目に留まればなぁって」

「うちに絵心のあるやつはいないぞ」

「私が描きます!」

自信満々に言うと、石堂さんは疑わしいような視線を向けてきた。
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