sugar、sugar、lip
「静葉っ! 静葉っ!!」



落ちたときの衝撃に備えて構えた体は、階段の下に居た奏大に受け止められていた。



恐る恐る開いた瞳に飛び込んだのは、



眉間に皺を寄せて、



見たことも無いくらい険しい顔をした奏大だった。



「……あっ」



奏大だ……。



なんて、のんびり思ってるわたし。



「はぁ……」



安心したように深く息をついた奏大が、わたしをキツくキツく抱き締めた……。



それに応えたくて、



ゆっくり、奏大の背中に手を回した時だった。




「ッゲホ!ゴホッ……」


わたしを腕から引き離し、



左手で喉を押さえ、



右手を口に添えて、見たことも無いほど激しく咳き込み始めた。



そして……



「奏大!! 奏大ってば!!」



初めて呼んだ奏大の名前と共に、



奏大の右手からは血が零れ落ちて……、




わたしの思考は停止した。









それからのことはよく覚えていない……。



誰が呼んだのか、
保健医の先生や担任が駆けつけて、



車で二人して病院に運ばれた。




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