悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
切り裂かれた黄色のドレスを手に取り、鼻先に近づけると、独特な甘い香りが微かに感じられた。

これはバニラをベースに、数種類の香り成分を混ぜた特注品の香水だ。

ルアンナ王女がいつもつけている香りなので、覚えがあった。

私の趣味ではない甘ったるい移り香に顔をしかめ、犯人の予想があたっていることを確信する。

まったく、母親に似て意地の悪い王女ね……。


王女相手に大事にする気はないが、やられっ放しで終わらせることもできない性分である。

「どうやって仕返ししたらいいと思う?」とアマーリアの髪を撫でながら、朝食に呼ばれるまでの時間を企みごとに費やしていた。


朝食は他の侍女たちと一緒のテーブルで取る。

バッカス夫人のくだらない嫌味を、右から左に聞き流して食事を終え、私は南棟の三階に戻ってきた。

この大邸宅は地上四階、地下二階の六階建てで、たくさんの尖塔を備えた複雑な形状をしている。

東西南北の名をつけた棟に分かれていて、南棟の三階に王族の私室が集中し、呼び出しにすぐに応じられるようにと、侍女の部屋も近くに設けられていた。

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