イジワル外科医の熱愛ロマンス
破談後、この一年近くは、祐と顔を合わせることもなかった。
これでもう、彼とは一生縁が切れた。
そう思って安心していたのに……。


まさか、無防備になった途端、彼がウチの医局に来るだなんて。
もう悪夢としか思えない。


私の家と祐の家は、先祖代々から関係の深い名家同士だ。
彼の実家が経営している宝生総合病院の土地は、何代か前の先祖が破格で譲ったものだと言うから、きっと私が思う以上に強く深い繋がりがあるんだろう。


その上、私と祐は、なんの因果か同じ学年に生まれてしまった。
私も祐も、幼稚舎から大学まで一貫教育の名門私立校に通っていたせいで、ほとんど一緒に育ってきたようなもの。


実際、医大に進む祐と別々の大学に進学するまでは、私の学生時代、右を見ても左を見ても彼がいたと言っても過言ではない。


たくさんの人に囲まれ人垣の向こうにいる祐には、なかなか近付くことができなかったけれど、彼がそこにいるだけで、私の世界までいつもキラキラしていた。
かく言う私も、そんな輝きに憧れていた女の一人だ。


今となっては認めたくない過去だけど、彼は間違いなく私の初恋の人。
そして、私に最上級のトラウマを植えつけた張本人―—。
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