炭酸アンチヒーロー
「ふ~……なんか変な汗かいてきた」

「大丈夫か?」

「だ、誰のせいだと……」



上目遣いで、うらめしげに言われる。俺のせいで慌てふためく蓮見を見るのがうれしくて、少々いじめすぎたらしい。反省はしてないけど。

だって、ついさっきまでは、本当にただのクラスメイトだったんだ。その均衡を、今ようやく破ることができた。

それでも高揚している内面を悟られないよう、表情は至って平然を装う。


ふと、窓の外の光景が目にとまる。休憩に入ったらしいサッカー部の連中が、中庭近くの水道にぞろぞろと集まっていた。

このタイミングでサッカー部が休憩ってことは……もう4時半?



「俺、もうすぐ休憩時間終わるだろうから部活に戻るわ」

「へっ、」



立ち上がりながらあっさり俺が言えば、ぽかんとした表情で未だ涙のにじむ瞳を向けてくる蓮見。

名残惜しいけれど、今はまだ部活動中だ。いつまでもここにいるわけにはいかない。

あ、そういえば、ノート……まあいいか。部活終わりに覚えていたら、教室に行けば。



「それじゃあ、また月曜日に」



言ってから、少し考える。そして背を向ける間際、念押しのつもりで蓮見の目を射抜くように見つめた。



「言っとくけど、本気だから」

「ッ、」

「覚悟しとけよ」



息を飲んだ蓮見に、宣戦布告のつもりでキッパリ言い放つ。一瞬呆気にとられたような顔をした後、やわらかそうな頬がかーっと赤く染まった。

明らかに動揺しているとわかる反応に満足し、自然と口角が上がる。そして今度こそ俺は、踵を返したのだった。
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