WANTED ~何故か隣国で指名手配されていたので、乗り込んでみました~ (平行世界)
「このまま帰すわけないでしょ」
「シノの方こそ何言ってんの。大国の王子なんでしょ。私が相手になるわけないじゃない」
「相手にするかどうかは、俺の権利だよ」
 さらに引き寄せられ、目前で青い瞳が真っ直ぐ見つめてきた。
「何のために迎えに行ったと思ってるの? ディアを直接見るために決まってるだろ」
 迎えに行くだけなら遣いを出して、きちんと説明をして招待することもできた。
 でもそれをしなかった理由は、彼女の人とナリを見るだめだ。
「俺の側に居たくないわけじゃないんだろ?」
 耳元で囁かれた言葉に、思わず頷きそうになって、はっと我にかえる。
「…………」
『言霊の祝福』。
 思わず頭に浮かんだのはケーノサの言葉。
 それは、彼の発する言葉には『特別な力』が備わっているという。
 そういう意味だとしたら、コレはもう捕らわれてしまっているのだろうか。
言霊の呪縛に。
 真剣な表情をした青い瞳が目の前にある。
 いや。
 ここに来るまで、幼い頃からずっと側で見守ってくれていた、優しい瞳だ。
「ディア、俺の言葉を信じろ」
「……わかった」
 頷く。
「わかったから、もう放して」
「うーん ヤダ」
「ヤダじゃない、『けーさま』助けて」
「シノ様、人前でイチャつくのはやめましょう」
「…人前じゃなければいいのか?」
「はい、それは存分に」
「いや、ちょっと待って、そうじゃないから。私の意思はー」
 ぷっと肩を震わして笑うシーフィラノに気付いてからかわれていたのだと気付く。
 幼馴染というだけあって、目覚めた途端、この息の合い方はどうなんだろ…。
それでも、シ-フィラノにそっと手を差し伸べ、3年間の眠りのため体力の戻っていない彼をベッドへと促すケーノサは、ちゃんと助けてくれている。
「側に居て、いいの?」
「もちろん」
 二人の声が重なり、笑顔で返される。
シーフィラノは手は、アルカディアの手を捕らえたまま、離さなかった。
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