WANTED ~何故か隣国で指名手配されていたので、乗り込んでみました~ (平行世界)
2 国境の海の上
 少しウトウトしていたアルカディアはざわめきと物音で目を覚ました。
「島について、停泊しただけだよ」
 すぐそばにいたらしいシノが問いかける間もなく答えを返してくる。
 寝顔を見られていたのかと思うと、なんだか気恥しい思いがする。
「島には、降りれるのか?」
「うん、ゆらゆら揺れる船に泊まるのが苦手な人もいるからね」
「じゃ、私も眠気覚ましにちょっと降りてくる…」
 そういうと、人の流れに逆らわずに出口へと向かった。
 小さな島だが、船の行き来が頻繁なだけあって、港は栄えている。
 物心ついてからテニトラニスの国から出たことがないアルカディアは、リサニル国の食べ物や工芸品など珍しく思う物も少なくない。
 様々な物がたくさん、所狭しと並び売られている。
 伯父と伯母の所で育った所為か、必要のない贅沢はしない彼女にとって、欲しいという興味よりも、仕事としてしていた装飾品の新しいデザインとしての興味の方が深かった。
 腰よりもずっと長い、きれいな黒髪をひとつに束ね、動きやすそうな服装で装飾品などまったく付けていないが、着飾れば男達はほっとかないだろう。
 そんな自分の容姿に気づいていないほど、自分に対する興味はあまりなかった。
 その市場の客の中に、怪しげな視線を彼女に送っている奴らがいる事も、彼女は気づかなかった。
『さて、戻るか……』
 いくつかの屋台を回り、朝食用にと少しの食べ物を買い終えた彼女は踵を返した。
と、目前に二人の男が立っている。
 邪魔な奴、と思って無視しようとしたが……その顔には見覚えがある。シノの逢った時の夜に追いかけて来た奴だ。
 そして背後にもいつの間にか、もう二人が詰め寄っていた。
 逃げる道がない。でも、逃げなければ……。
「やっと見つけたよ、お嬢さん」
「自ら海を渡ってくれるとはありがたい」
 不気味な笑みを漏らしながら近寄って来る4人。
 アルカディアはその場を動かずじっと立っている。
『引き付けておいて、隙を衝いて逃げる』
 男が捕らえるため腕を伸ばそうとした時、
『今だ!』
 勢い良く男の一人を突き飛ばし、崩れた体勢から走って逃げた。
 不意を衝かれた男達の動作が遅れる。
「急げ、捕まえろ!」
『捕まえられてたまるかー』
 通りから外れて相手を巻こうとしたが、しつこく追いかけて来る。
 裏の路地を入って行った時、その先が行き止まりの袋小路だった。
「うそ!」
 叫んでしまう。
 壁の高さは十数m。よじ登る事は不可能だ。男達はすぐ後ろまで来ている。身動きが出来ない。
「"アルカディア"さん。俺達と一緒に来てもらいましょうか」
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