間違った恋
っていうかスキンヘッドは私の事を【ホシ】と言ったのを私は聞き逃さなかった。
私は犯罪者じゃねえっての。
どっちかっていうとお前らの方だから。
心の中でしか悪態を付けない私の事をチキンと思うが、こんな厳ついやつら目の前にして本音なんて出せるか。
ビクビクと怯えながら俯いていると、男二人に若と呼ばれて居た男が私の目の前に現れた。
「堅気のアンタにうちの部下が手を挙げたらいな。本当にすまなかった」
若と呼ばれた男が深く腰を下げる。
「ちょ、やめてください!私大丈夫なんで」
こんな所人に見つかったら厄介になる。
一刻も早く家の中に入りたい私は全力で首を振った。
すると若と呼ばれた男はゆっくりと顔を上げた。
「……え」
時が止まったような気がした。
薄暗くてわからなかった顔は月明かりに照らされてはっきりと見えるようになった。
「本当に悪かった」
そう一言私に告げるとスキンヘッドの男に何かを指示した。
スキンヘッドは持っていたカバンの中から封筒を取り出すとそっと差し出して来た。
「これ頰の治療費にして下さい」
そう言って封筒を受け取り中身をのぞいて見た。
中身をのぞくとそこには大量の札。
「受け取れません!」
すぐスキンヘッドに返した。
だけどスキンヘッドも負けじと受け取れってしつこく渡してこようとする。
いらないっていってる札束をぐいぐいと渡してくるスキンヘッドにもイライラするし、それをわざわざ指示して部下に手渡すようにさせる若って人にもイライラする。
私は封筒を受け取ると若呼ばれる人の胸元に向かってそれを投げた。
自分でもなんでこんな事したのかわからないけど、なんだか無性にイライラした。