寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「はい、秘書の方から伺いました」


夕方にお見えになるお客様とは、そのまま外へ行く確率が高いことがわかってきたので、今回もそうかもしれないと、前もって好物がなにか調べたのだ。
それが功を奏して喜んでもらえたようだった。

沙智さんの指導もあり、オリオンコミュニケーションズに入社して二週間、少しずつ要領はつかめてきている。


「茜のこともお気に召したようだ」

「えっ? 私のことをですか……?」


思いもしないことを言われて戸惑う。
いったい私のどこを気に入ったのだろう。


「電話やここでの応対が素晴らしいと言っていたよ」

「本当ですか?」


そうだとしたら嬉しい。
沙智さんから“秘書は謙虚で丁寧、常に場をわきまえた応対をすること”と教えてもらい、それを自分なりに実践してきた甲斐がある。
自分の顔がパッと華やいだのを感じた。

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