寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「そうなんです。つい嬉しくなっちゃって」
面白そうに理玖さんが笑う。
「鼻が真っ赤だぞ」
「ほんとですか?」
私の頬を包んだ理玖さんの手が温かい。
「ほら、冷えるから中に入るぞ」
理玖さんはその手で今度は私の手を握ってくれた。
「素敵なところですね」
景色も部屋も、山の幸をふんだんに使った料理も。
なにより理玖さんと一緒だということが嬉しい。
「茜が気に入ったのなら、また一緒に来よう」
理玖さんとまたここへ……?
彼に注がれる穏やかな眼差しを見ていると、それが本当に叶えられるような気がしてくる。
期待しちゃいけない。
今までそう思ってきたけれど、ここへ来てからの理玖さんの私に対する態度に特別感を覚えて、今まで打ち消してきた期待がむくむくと大きくなるのを感じずにはいられなかった。