復讐劇は苦い恋の味
開けられた助手席のドア。

君嶋くんは私が乗り込んだのを確認すると閉めてくれた。そして支払いを済ませ彼も運転席に乗り込むと、車を発進させた。


道路に出て国道を進んでいく車内では、あのお互い好きなアニメ映画の主題歌が流れている。

この映画、君嶋くんと観に行って楽しかったな。

観た後もふたりで映画の感想を言い合って、すごく楽しい時間だった。

映画だけじゃない。話が合って価値観が同じで、一緒にいて心地よい。

演技なんかじゃなかったよね? ……君嶋くんも私と同じように楽しんでくれていた?

運転する彼の横顔を盗み見ると、君嶋くんは前を見据えたまま口を開いた。

「美空ちゃんとの出会いは五年前、まだ営業として働いている時だった。見合いの席で松本さんに言われちゃったけど、一目惚れだった」

クスッと笑うと、君嶋くんはすべてを話してくれた。
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