復讐劇は苦い恋の味
まるで“自分の気持ちは嘘じゃない。本気です”と伝えるように……。

二日経った今でも鮮明に思い出せてしまう。

君嶋くんが私に向ける優しい眼差しと、そして伝えてくれた真剣な想いを。

だからこそ溜息が出るほど困るし、戸惑っている。私は君嶋くんのこと復讐したいほど憎んでいるし、大嫌いなはず。

会うのは金曜日の夜で最後にしようと思っていた。

嫌われるようなことをして、向こうから断るように仕向けたつもりだった。

「それにしても滑稽ねぇ……。嫌われようと起こした言動によって、ますます彼に好かれちゃうとか」

「……それを言わないでよ。私だって自分でなにやっているんだろうって思っているんだから」


もう会うつもりなかったのに、帰り際に『また今度、お誘いしてもいいですか? 今度は休日にゆっくりお会いしたいです』って言われ、断ることができなかったんだ。


「美空って情に脆いよね。あれでしょ? 彼も理由は違うにしろ、自分と同じよように悩み、苦しんできたんだと思ったら、本当のことを打ち明けることはもちろん、なにも言えなくなっちゃったんでしょ?」
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