全て美味しく頂きます。
「なるほど」
 腕組をして考え込んでいる風の彼に、私はコクンと頷いた。

「私って昔から、そういう立ち位置なんだよね。ブーケの中なら、葉っぱとまではいかないけれど、メインの横にあるちっさい花みたいな感じ。
 地味ってことね。

 杉原さんは__そんな私を見つけ出して『可愛い』って言ってくれた、たった一人の人なんだあ。
 ま、最初は結婚してるってことは知らなかったんだけどね…」

 ちっ。

 急にノロケに変わった話に、彼が軽く舌打ちしたので、私は慌てて話題を変えた。

「私のことより、祥善寺の方はどうなのよ。
 聞いたよ?あの本店の女神様、サオリさんに告られたのに、振っちゃったらしいじゃない。
 私はタイプじゃないけどさ。
 結構イケメンだし、出世しそうだし。女子の間で名前もちょくちょく出るのにさ、何で彼女つくんないの?」

「だからぁ~、言っただろ。俺はいつか出逢えるただ一人の為にだなあ」

「あー、そうかそうか。まだ見ぬ奥さんの為に、キモチワルイ貞操を守り抜いてるんだっけ?」

「キモチワルイとはなんだ!失礼な…」

「あー…でも、そのテイソーを私が奪っちゃったんだもんね。ごめんねー、ホント」

 不倫して、浮気して…同期にまで迷惑かけて。
 私は一体何をやってるんだか。
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