全て美味しく頂きます。
 ラーメンを啜る音だけが、二人の間を埋めていた。
 

 私と杉原さんとの『いつもの場所』は、市内のシティホテル。
 人目を忍ぶ私達のデートは、食事をそれぞれで済ませてきて、あとはホテルでセックスするだけ。
 たまには私の部屋に泊まっていくけど、大抵は朝を待たずに帰ってしまう。

 女子としてかなりミジメな状況だとは思うけど、

 私には…それしかない。
 


「なあ、長谷川の予定がなくなったんならさ、これからちょっと、どっか寄ってく?」

 駅に向かう帰り道、ブラブラと隣を歩く彼が、私に声をかけてきた。

「んー…そうだね…」

 上の空で返事を返すが、今の祥善寺はやけに優しい。いつものような突っこみもなく、問いかけた。


「ゲーセンは?キャッチャー、やるか」
「んーー…」
 
 気が乗らない。

「カラオケは?俺、覚えたい歌があるんだよなー」

「……そうだね…」
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