天使と悪魔の攻防戦(短編集)
クリームが舌を這うので
【クリームが舌を這うので】




 きっとミオはね、食べられると思うんだ。だってどこを舐めても甘いし、良いにおいだし。もしかして砂糖でできてる?

 なんて話をしたら「直矢がわたしの身体に、クリームやチョコを塗るからでしょう」と言われた。
 まあ確かに。ハロウィンだから職場で交換会をして来たと、ミオが大量のお菓子を持って帰って来て、おれはおれでケーキが食べたい気分だったからお土産に持って来て、甘い物がたくさんあったから、ミオを押し倒しながらあちこちに塗りたくったのだけれど。

 でもそのせいだけじゃない。いつ、どこにキスをしても、ミオは甘いし良いにおいがすると思う。

 ためしに、肩を出して寝ているミオに舌を這わせたら「ちょっと、なーお、くすぐったいってば……」と笑いながら払いのけられた。

「ふがっ」

 ミオの指が鼻に入って変な声が出たけれど、そんなに痛くもないし問題ない。

「ちょっと寝かせて……明日朝イチで会議……」

 言いながらミオは毛布を頭まで被って、丸くなる。

 でもね、足が出ているよ。きれいな陶器みたいな足が見えているよ。
 ぺろり、と。舌を這わせてみる。うん、やっぱり甘い。ふくらはぎも膝も太ももも。これはクリームプレイのせいってだけじゃないと思うんだ。

 そんなミオを舐め続けたら、数年後にはおれは糖尿病になっちゃうと思うんだ。

 そうしたら、ちゃんと看病してね。



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