天使と悪魔の攻防戦(短編集)


「なお、や。眠い、やめて……」

「ね、食べていい?」

「……だめ」

「一口は?」

「ひとくちもだめ……」

「けち」

「はいはい、おやすみー……」


 今にも寝起きを立て初めてしまいそうなミオを後ろから、毛布ごと抱き締めてみる。

 毛布の中からミオを発掘してみると、穏やかな寝起きが聞こえてきた。

「ミオー」

「……」

「ミオってばー」

「……」

「いただきまーす」

 そんなミオの肩に、がぶりと噛みつく。

「……痛い!」

 そうしたら思ったより強く噛んでしまったみたいで、飛び起きたミオの肘が、おれの顔面に直撃した。

「ううう……めっちゃ痛いー……」

「こっちのセリフでしょうが! 肩噛まないでよ!」

「だってミオ甘いんだもん!」

「わたしが悪いみたいな言い方しないで。クリームプレイのせいだってば」

 違うよ。ミオが悪いんだよ。ミオがこんなに甘いから。こんなに良いにおいがするから。
 こんなに甘いにおいを振り撒いているんだから、ちょっとくらいかまってくれてもいいのに。
 こんなに甘いにおいを嗅がされ続けたおれは、すっかり中毒になってしまっているのだから、責任とってくれてもいいのに。

 きみの肌を舐めるだけで、おれの体温は上昇するよ。やっぱり本当に糖尿病になっちゃうかもよ。
 ねえ。





(了)
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