五感のキオク~触れたくなる その肌~
玄関に入り今度は私の方から彼に手を伸ばした。


靴を履いたまま、背伸びをしてその首にしがみつくようにして彼に口付けた。


最初からその唇を貪る。



それに答えるように彼は私の唇に軽く歯を立てた。



「あ、」



つい、漏れてしまった声に彼はしてやったりといった顔。



「触れてって言ったんだから、自分からしたらダメだろう?」

「だって……」



本当は私が触れたい。



会いたかった。

触れたかった。



こうして心ごと彼を感じたかった。




自分のくだらないプライドのせいで、彼にも辛い思いをさせてしまっていたのかもしれない。



「さっきまで友人と会っていたの」

「邪魔してしまったかな?」

「いいえ、その友人のおかげで私、今ここに来れているの」



少し不思議そうな顔をする彼に続けて言った。


「ごめんなさい、ずっと会いたかった、ずっと触れたかった、ずっと―――」
「全部言われたら困るよ、少しはこっちにも言わせて」



私の言葉を途中で遮った彼は頬に触れ、



「ずっと触れていたいんだ、いつだってこうやって」



彼を見れば熱に浮かされたようなそんな瞳。
< 14 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop