五感のキオク~触れたくなる その肌~


「ねぇ、あの時、」


突然そう言われても反応はないだろう。あの時を今思い出していたのは私だから。


「ほら、黒人の彼に二人でお持ち帰りされちゃった時」

「あぁ、懐かしいね。そんな事もあったよね~」



彼女にとってはただの想い出で。

私にとっては……



「あの時、私も本当は肌を堪能したかった」

「へ?」

「あの時、下でシたんでしょ?声、聞こえてたし」

「あぁ、やっぱり……何にも言わないから寝てるかなぁなんてね?」



寝てたとしても起きるわよ、あの声のおかげで。



「あの時、肌が合うって言ったその意味を知りたいって思ったの」

「てことは、彼とは何もなかった?」



少しは気にしてたんだ。

さすがにあの雰囲気で何もないでは済ませられない。

と言っても手を繋がれていただけだったけど。

でも、そんな事教えてあげない。



「もちろんよ、彼を共有なんて私はしない」

「その言い方、らしいけどね?」



らしい。

あの時は確かにそう思っていたけど、



「でも今なら堪能してたかもと思う」

「ふぅーん」



負け惜しみ、か。
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